映画レビュー「あ」


<赤いアモーレ>
 クルマの故障のため電話を借りた妻子あるエリート医者が、そこの下流社会の家の女を手篭めにしてしまったことから、いつのまにか互いに心の傷を舐めあうようになるまでを描くイタリア映画。手篭めにしてしまったけれど「愛の嵐」とは違って、不思議とさわやかで、愛情と体の相性と、幸せについて考えさせられるまた観たい作品。
外科医の男は彼女との関係を妻子には隠して生活するが、やがて自分の息子が重度の事故で手術室に運ばれてきたときから物語に変化が生まれます。
 イタリアのどこかノスタルジックな雰囲気が素敵でいいな〜。自分も乾いた空気の中にいて、水が飲みたくなるような感じがします。
アルファロメオとか運転したくなります。



<アマデウス>

 天才音楽家モーツァルトの波乱万丈な人生を描きます。
テレビで世界の偉人ストーリーを放送しているとつい見てしまう人でも、そうでない人でも、天才の破天荒な生き方に眼が離せなくなってしまうでしょう。天才って、やっぱり普通の人と言動が違うよね。
 イタリアの宮廷音楽家アントニオ・サリエリは、天才音楽家と呼ばれるモーツァルトがやって来たのを目にし、その音楽から神の領域を見出し驚愕します。ところが、モーツァルトというのは下品な高笑いと、傲慢な態度を持つけしからん人物なのでした。
サリエリはその人物像に失望しながらも、優れた音楽家ゆえに、彼の才能にいち早く気づいてしまったという悲劇…。激しく嫉妬しながらも、その音楽に魅了されてしまいます。
 宮廷音楽家として権力をもつサリエリは、モーツァルトの公演を裏工作で妨害しながら、彼の見方を装います。やがて父親の死と、自分にも迫る死の影によって衰弱してゆくモーツァルト。
 「ドン・ジョバンニ」の舞台から現実に出てきた、死神のような仮面の男から、彼は自分のためのレクイエムを書くよう依頼されます。放蕩に明け暮れるモーツァルトは、収入を得るために衰弱しながらも「魔笛」や「レクイエム」を作曲し続け、やがて息絶えてしまいます…。

モーツァルトはその名声とは裏腹に無縁仏のように埋葬され、現在もどこに眠っているのか判明していません。天才の一生はかくも儚い…。
これは映画史上の中でも異色の傑作です。



 余談ですが、この作品でサリエリが嫉妬深い悪人に描かれていますが、あくまで戯曲を原作にしたフィクションですので、悪人と決め付けないように。
ちなみに私のモーツァルトの愛聴版は、マルティン・シュタットフェルトの「ピアノ協奏曲 第24番&20番」、ワルター指揮の「交響曲第40番&41番」、ニコラウス・アーノンクール指揮の「レクイエム」です。晩年の作品は、本当に同じ人間が作ったのだろうかと思ってしまいますね。アマデウスの名の通り、やはり「神の使い」か何かだったのでしょうか…?



<アメリ>
 フランス映画特有のシュールな展開が楽しめる作品。
監督は「エイリアン4」のジャン・ピエール・ジュネ。あの残忍なエイリアン・シリーズにヒューマニティーを織り込んだフランス人監督は、私は見事だったと思う。
 物語は、空想がちな不思議少女が人々を幸せにしていく過程で、不思議青年との恋模様を描くというもの。音楽がノスタルジックで素晴らしく、私はサントラも持っています。
(もうお店を閉めてしまいましたが、大間々町にハルモニアというレコード屋さんがあって、クラシック好きのおじさんと音楽談義をしていました。閉店する際に、私がアメリのサントラを取り寄せてもらったのですが、これを聞いたおじさんが自分もこの映画を見たくなって注文しました。おじさんからはバッハの「マタイ受難曲」を、私は「アメリ」のサントラを、とっておきの音楽として教えあって共有したというエピソードでした…。)

 アメリは女のコにも大人気。本国フランスではアメリ・カットという髪型が流行した模様。
そういえば、今どきのゲームや映画は開発費がかかりすぎて、利益で元をとるのが大変苦労するようで、DVDや関連グッズの売り上げを総合してようやくトントンなんだとか。そんな中、この映画は広告費が全くかけられず、シラク大統領に観てもらい、絶賛されたということをアピールしたら見事な効果があったのは、有名な話。
 フランス映画はとっつきにくいと思う人は、是非アメリを観てみて下さい。
そうしたら、次は「髪結いの亭主」などに挑戦してみてはいかがでしょうか。



<アビス>
 海底に潜む謎の生物と探検隊の「未知との遭遇」深海版。
「ザ・グリート」のような怪物モノかと思ったら急にSFチックな展開にげんなり。



<アナコンダ>
 B級巨大ヘビ映画。続編もあった気がするが、どちらもB級の極み。「悲鳴までもが飲み込まれる…」というCMだけはなかなか良かったのだが…。
この作品は忘れたころにTVで放映するが、何度観てもこりゃダメだ。でも観ちゃう。



<愛のコリーダ>
 愛するがあまり情夫のイチモツを切り取ってしまった昭和の「阿部定事件」を、大島渚監督が映画化。独特の狂気が感じられてスゲー!と思ったが、2回は見ようと思わない作品(笑)。
R18禁か何かで、日本では法的に無理だったので、フランスで編集したらしい。
裏ビデオもクルマの馬力規制も、日本社会のしくみって外国モノには治外法権だったりするのは、何かおかしいと思う。
いっそのこと出演者全部の股間に常時モザイクでもかけてみろっ!!と言いたくなる。
(そんなホームドラマがあったら、なかなかシュールで面白いと思うけど…ビートたけしの本に書いてあったので、世界のキタノには来年あたり是非上映してほしい)

 他にも大島監督の作品は「戦場のメリークリスマス」や「御法度」という作品がありますが、どれも独特の雰囲気があって、なんかすごいセクシュアルでドロドロしていますね…。


<アメージング・ハイウェイ60>
 あの「バック・トゥ・ザ・フューチャー」の監督が送るロード・ゴーイング・ムービー。レオンに敵役で出演したゲーリー・オールドマンが「フィフス・エレメント」みたいに、これまたキワモノ役で登場している。あくまで私見だが、彼はジャック・ニコルソン以来の若手の怪優じゃなかろうか…?
 物語は20歳の誕生日に赤いBMWのオープンカーを送られたお金持ちの青年が、自分の漠然とした将来はこのままで良いのか悩むところから始まる。
 果たしてこのまま父の言いなりとなって法律学校に進むべきなのか、大好きな画家への道は諦めるべきなのか、今の恋人は本当に自分を愛してくれているのか?

 複雑な想いが交錯する中、不思議な力を持つ謎の男から「願い事を一つ叶えてやる」と言われます。それに「人生の答えが欲しい」と願った主人公は、赤いBMWに乗って「ルート60」へと旅立ちます。

 アメリカには実在しないルート60は、同じように「答え」を求めて彷徨う人たちがいるパワレルワールドで、主人公はそこで哲学的な体験をします。クルマのハンドルを握るのは自分。まさに人生の岐路を行く旅です。
 主人公の手には、いつもヒントを与えてくれる「エイトボール」というアイテムが存在するが、それが導き出す言葉をどのように活用するかは、結局のところ「自分の意思決定」次第なのだ教えてくれる作品。
 後半のハラハラするような展開は、まさに「バック・トゥ・ザ・フューチャー」みたいだ。


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