映画レビュー「え」


<エヴァンゲリオン>
 「Air」と、「真心を君に」、がタイトルだったと思う。
一世を風靡した大人気アニメの結末を描く劇場版。一言でいえば確かに「気持ち悪い」作品。でもキリスト教に関わる言葉がかなり思わせぶりに出てくる。カルト本も沢山出回ったなぁ。戦闘シーンは黒澤明みたいで好き。グロさの見せ方もほど良い感じ。(というのは「死霊のはらわた」とか「バタリアン」とか、ああいうスプラッターよりはスタイリッシュという意味で…笑)
 以前、NHKに庵野秀明監督が出ていたのを見たことがある。
庵野監督は身内に障害者がいるので、その影響あって作品のロボットもどこか肢体が切断されたりと、「常に不完全」な状態になるそうだ。
エヴァは「ナウシカ」の巨人兵に似ているなと思ったら、やはり庵野監督が担当していたらしい。宮崎駿監督からは、あのシーンの煙を2色か3色で表現するように指示されて苦労したんだとか。
 普段クラシック音楽など聴かない人に限って、本作品を観ると「パッヘルベルのカノンが好きです」とか「ハレルヤ聴きます」とか、言いいたくなるらしい精神系アニメだ。お前の頭がハレルヤだっての。

 アメリカのハリウッド版が実現するとか、またアニメの劇場版で新約エヴァをやるとか、パチスロで人気再燃とかいろいろあるが、もういいや…(笑)。

そういえば、たくさん出回った本の中に「失楽園エヴァンゲリオン」というエロ漫画があったが、今は古本屋を探してもどこにも見当たらない。それがこの作品の一番の謎だよ(笑)。



<エル・マリアッチ>
 元祖・ギターケースにマシンガンの映画。
この低予算映画でロバート・ロドリゲス監督は一躍成功したことで有名だ。
 南米のある田舎町に、ギターを持ったさすらいのマリアッチ(歌謡い)がやってくる。そこへ同じく、ギターケースにマシンガンを隠し持った殺し屋がやってくる。
主人公のマリアッチは職探しをしていたところ、間違えてマフィアの抗争に巻き込まれてしまうというもの。設定がクールです。ラテンです。カッチョイイです。
 なかなか映し方や演出も凝っていて、観ていながら「コマンドー」のようなテンポの良さを感じましたよ。「コマンドー」に並んで、低予算ながら素晴らしいアクション映画が作れるという、よいお手本になる作品です。
この作品に出会ったのは、あるさびれたビデオ屋(店の半分がカーテンで仕切ってあり、半分から向こう側がステキな楽園になっている構造)なのですが、奥じゃなくて手前側にあるカモフラージュ(?)の壁の中に発見しました。「グライド・イン・ブルー」とか「ヘルレイザー」とか「ヤクザもの」などなど、昔の隠れた名作やB級Vシネマが、色あせたビデオ屋のパッケージのまま並んでいるのでした。
 誰も見向きもしない場所ですが、私のような物好きにはこういう作品を見つけて「うおっ!こりゃ面白そう!100円じゃ買ってみよう…」と喜ぶささやかな楽しみもあるのでした。

 この作品シリーズが、ハリウッド入りになって「デスペラード」や「レジェンド・オブ・メキシコ」としてシリーズ化されています。ロバート・ロドリゲス監督は「スパイキッズ」でハイウッド入りしましたが、じつはタランティーノの「フォー・ルームス」にもナイスな短編を収録しているので、是非チェックしてみて下さいね!


<エレファントマン>
 あまりに不憫な話で泣ける。。
最近の安易な「感動して泣いた」という、涙の大安売りには辟易させられるが、メディア(映画)という媒体を通じて心を描いた本物の作品は少ない。
しかし、エレファントマンは本物の映画である。
 デヴィット・リンチ監督の有名な作品は、特に「エレファントマン」もそうなのですがあまり見かけないだけに、もっと多くの人に知ってほしい優れた映画です。発表された年代は1990年頃だったと思いますが、演出のためにわざとモノクロ画面になっています。
 舞台は18世紀の産業革命で賑わうイギリス、ある見世物小屋にエレファントマンという全身奇形の醜い男がいました。それを聞きつけたアンソニーホプキンス演じる外科が興味本位でこれを覗き、醜い姿に驚愕しながらも興味本位で診察に引き取ることになりました。ところが、ある時このジョン・メリックという青年は知能もあり、聖書の詩篇を愛する美しい心を持っていることがわかりました。
 一躍有名になったエレファントマン、それを取り返そうとする見世物小屋の主人、良心との呵責に揺れる医師、初めて人間の温かい心に触れるエレファントマンと、好奇の対象にする人々…。様々な人間の心が一斉に絡み合っていき、私たちは主人公の憐れな境遇に瞠目せざるをえません。

 奇形の彼は呼吸困難になってしまうために、横になって眠ることができません。
しかし、人間の愛情に触れることで心満たされた彼は、それを致死と知りながら、はじめて身体をのばして横になるのでした…。本当に不憫で、涙を誘う美しい映画です。
 教育のビデオとしても、誰でも一度は観ておくべき作品だと思います。

 ベトナム戦争の悲劇と、人間性の善悪を対比させて描いた「プラトーン」にも使われた、バーバー作曲の「弦楽のためのアダージョ」が、物語のラストで静かに流れてきます。
そこで私は、いつも人間の歴史を振り返ったときにハッキリとわかる、悲劇性というものを意識せずにはいられないのです。どうして人間は美しい心がありながら、一方で愚かな行為をやめることができないのか。崇高な人間と、そうでない心を持った人間が存在するのは何故か。そこに神は存在するのか?
 「私はエレファントマンではない!私は人間だ!」
これはたまたま醜悪な姿を持って生まれてしまった、一人の人間の叫び声である。


 余談:最近テレビは身体障害者の差別と糾弾されるのを恐れてか、不具者の写された映画を観ることがなくなりました。「グーニーズ」のような良い作品も、おそらく例のスロースという人物がいるからでしょうか、もう何年も放送していません。一方で、障害者を扱った番組では、健気に頑張る姿が強調されますが、まるで腫れ物に触っているかのような扱いです。テレビって、情報を受け取ることにアタマを使わなくても良い媒体でしょ?何も考えずにあんなものばかり観ていると、観る側はまともなバランス感覚がなくなってしまう気がします。 スイッチは切るためにある、そう気づいた人はメディアとの接し方が上手なことは間違いありません。私はそれが本当の「情報リテラシー」だと思います。


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