映画レビュー「は」


<ハーフ・ア・チャンス>
 歳をとって渋くなったショーン・コネリーとアラン・ドロンが競演するフランス映画。役者を間違えてたらごめんなさい。
二人の男のところへ突然現れた若い女。この娘は母親の遺言のテープによると、若い頃に二人の男を同時に愛したと記録されており、しかしそれがどちらかは分からないのだという。
そんな理由で二人のジゴロな男が「俺の娘に決まってるだろう!」「いいや、俺に決まってる!」と争ううちに、娘のトラブルに巻き込まれてしまう。危機を乗り越えて二人の男には友情が芽生え、結局どちらの娘かは、どうでも良くなってしまうのだ。
 クルマが沢山登場し、また渋い男の姿がこれまたステキな映画である。


<バタリアン>
 最低。いくらB級でもこいつはヒドすぎる。(笑)
どんな映画かと申しますと、公開時は名作『コマンドー』と一緒にカップリング放映されていたようで、中身はゾンビ映画である。
 ただし、そのゾンビというものが元気すぎる。
あるウワサによると、研究所には怪しい生物実験をしていたのだが、そのクスリが入ったタンクが不手際で破裂した。するとそのクスリが煙突からモワモワと街中に散布されてしまい。それを吸ったみんながゾンビになってしまうというもの。
(ちなみに、この煙突シーンで激しいロック音楽が流れ、オープニングシーンとなる。ここまでは「なるほどねー」と笑って観られる。)
 タチが悪いのは、実験室にあった犬の標本やミイラがそれで生き返ることで、しかも死者(ミイラなど)が喋るのである。
腐っていないゾンビはとても元気に走り回るし、「そうだ!アタマを破壊すれば死ぬと映画でもやていたぞ!」と思い出した学生が、ツルハシで押さえつけたアタマを貫いても変わらずバタバタしているのである。要はセオリーの通じない元気な最強ゾンビである。
 彼らゾンビに共通していることは、皆「BLAIN…(脳みそ)」とだけつぶやくことで、縛り付けたミイラの女(名前あり)に学生が脳みそを食う理由を聞くと、答えに行き詰って「うう、わからない……。BLAIN〜…(脳みそ〜)」と不毛な会話が続くのである。

 こいつらに噛まれたら当然ゾンビになってしまうが、感染した警官が無線で救急車や応援などを呼ぶ。するとすぐに車が到着するが、街中のゾンビ化した暴徒がいっせいに襲い掛かってきて食われてしまうのだ。 で、「さらに応援を」と繰り返し、次々に応援部隊がゾンビにやられてしまうのである。拳銃を発砲しても焼け石に水、である。なんつーか、全然きいてねーし。ゾンビが走ってくるし。

最後は唯一生き残った学生たちが教会に逃げ込んだ後、どうなってしまったか忘れたが、とにかく「お約束」のカケラもないバカバカしい最低のB級映画である。よりによって3ぐらいまでシリーズ化してしまったのだが、認められる功績はそれぐらい(笑)で、気分的には見た後最低の映画である。私のトラウマ、である。
 個人的な思い出話になるが、以前先輩から「これ、やってみ。」と渡された『絶望 〜青い果実の散花〜』というPC用鬼畜バカエロゲーをやらされたことがあるが、ギャグのつもりだったのか、それとも真面目に愉しんでいたのかわからない恐ろしい話であるが、そんな作品に限って結構愛好家がいたもので、そういう不可解な楽しさがわかる人にはおすすめできそうな映画である。
 でも、小説の『鬼畜人ヤプー』と通じる部分があるのかは、不可解な点で一致するかもしれない。 くだらない作品に語りすぎてしまった…。



<バトル・ロワイアル>
 深作欣二監督の遺作。一時期とんでもない非倫理的で過激な内容に、教育委員会やPTAらからの非難が集中して話題を集めた作品。原作はまさに三文小説というものだが、それをうまく編集して映画化されている。
 内容はとんでもなく社会が荒廃したリアル日本が舞台で、失業率やら何やらすさまじい社会で自信をなくした大人たちが、子供達を恐れた結果BR法というのが施行され、毎年中学生だか高校生のあるクラスが抽選で殺し合いをやらされるというもの。

 いろいろ問題視されたが、こうした内容の発想は思春期なら誰でも思いつくものである。破壊衝動や狂気というものは誰の中にも潜んでいるのであって、それを凶悪犯罪に繋がると結びつけてしまうのは、いささか短絡的である。
そう考えると、この映画は社会性を表わした産物とも言える。
 最後に「走れ」というメッセージで終わるので、『もののけ姫』の「生きろ」という言葉と同じく、そうした世の中でもとにかくグダグダしている場合じゃなくて生き抜いてみせろヨ!というものであり、実感するにはそれなりの人生経験と行動哲学が必要である。

 ま、バイオレンス性あふれる中坊やコンバットマガジンが愛読書の高校生の空想するパラレルワールドを、それなりに上手く表現したのがこの作品である。
 ただし、そうした年中エアガンのカタログを眺めているボーヤにはいささか評判が悪い。なぜなら、「銃の使い方がなっていない」からである。(笑)



<HANA-BI>
 北野武監督の名を一躍世界に轟かせた作品。
これも悲惨な末路を辿るヤクザものだが、その裏には人間の弱さや寂しさと、少しの優しさがつきまとう作品。あれ?刑事ものだたっけ??(笑)
 作品は見れば北野作品の良さがわかるので、ここではヨタ話を。
このHANA−BIがカンヌ映画祭で受賞したら80万円くらい貰ったが、それを知人たちと芸者遊びで使ってすぐにパーにしてしまったらしい。それから、あの絵のシーンは北野監督本人の手によるものだが、故・淀川さんによればあのシーンはいらないと言われたらしい。そうかなぁ。
 映画関係者の女性の外人さんが、この映画の最後のシーンは特に涙が止まりませんでしたと言っていたが、面白いのは「世界の北野」がビートたけしでお笑いをやっていた事実であり、フランス人の青年が「世界まる見え」の冒頭のコスプレVTRを見せられて「信じられません…」と失望していたとだ。
熱心な映画研究者で彼を崇拝していた、フランスの青年の呆然とした表情が何とも切なかった。
 「世界の北野」といえば、黒澤明監督が亡くなる前に彼に「日本の映画をよろしく頼む」とメッセージを残している。
 シリアスな北野武と、愉快なビートたけし。どちらもたけしであるが、シリアスな現実を知らなければお笑いもできないことを僕はよく知っている。


<バニシング・ポイント>
 運び屋のコワルスキーは、かつてプロのレーサーである。また、警察官という社会権力側の立場でも働いていた経歴があり、その矛盾も抱えていた。
そして今はしがないクルマ関係の陸送仕事をしているが、そんな彼が改造された白いダッジ・チャレンジャーを運ぶ事になる。
 自暴自棄になった彼は現在ドラッグ浸りの日々を送るが、そんな鬱憤を晴らすように15時間以内に目的地まで大陸弾道の賭けを行う。
次々と行く手を阻む警察のバイクやパトカー、さらに追尾するヘリまであらゆる障壁をなぎ倒しながら、時速200km以上のスピードで激走を続けるのである。
 やがて目的地の町に到着する頃、最終手段に出た警官隊や「スピードによる自由の象徴」を応援する人々が待ち構えていた。

刻々と迫る“消失点”へ向けて、彼はただひたすら走り続けるのであった。
70年代初頭のアメリカ社会を象徴する『イージー・ライダー』のような映画だ。


<パルプ・フィクション>
 
クエンティン・タランティーノ監督の超出世作。
イカサマ試合を演じるボクサーの逃避行と、ケチな強盗カップルと、性格が正反対の男2人ヤクザコンビ。それらの異なる境遇が3つ巴となって同時進行する。
タランティーノ作品の中では、なかなか好印象。
キルビルのように“いかにもB級”っぽくて、お下劣で、パワーを感じる作品。


<バンディッツ>
 とある銀行強盗が警官隊に包囲され、絶体絶命かと思った途端に、仲間割れを起こして悲劇的な終わりを遂げる事件が起きる。しかし、その強盗コンビは実は一人の女が原因で仲間割れを起こしていたのである。
この二人はおまぬけ強盗ということになっているが、実際はマスコミにも余裕のインタビューに答える有名な天才強盗コンビである。彼らに失敗は無いはずであった。
 そんなステキな強盗が、最後にはヘマをやらかして悲惨な仲間割れまで起こしてしまった事件の真相とは?という物語。
 強盗役の片方はブルース・ウイリスだが、もう片方は忘れたよ。


<ハンテッド>
 『ブラックホーク・ダウン』のような実話をもとにしたドキュメンタリー。戦場において完全なる殺人マシーンとして訓練された兵士が、帰国後に精神異常となり連続殺人犯になってしまう。それを止められるのは、かつて彼を殺人マシンへと訓練した「追跡者」の男だけである。
 戦場で痕跡を残さない為に自然のあらゆる法則を熟知しており、わずかな痕跡を元に敵を追跡する。その技法があらゆる場面で連続する。
 目を見張るべきは、この作品の特徴であるナイフの格闘戦である。プロの殺し屋が闘えば勝敗は一瞬でつく。自然の石を割り、さらに削って刃物にしたり、火を起こし鉄くずを鍛錬してオリジナルのナイフを作成したりもする。

アメリカ社会の病気がテーマだが、地味ながらスリリングな作品だ。


<ハンニバル>
 「羊たちの沈黙」シリーズの続編。今回の監督はリドリー・スコットが担当する。暗闇の使い方や戦争映画さながらの特撮スプラッターが目立つ作品。
 前回の「羊〜」はレクター博士の逃亡で終わったが、その凶悪犯はフィル博士と名乗りイタリアに潜伏していた。そこへクラリスが赤子を連れた麻薬犯を銃殺したことがスキャンダルになり、再びレクター博士からコンタクトがある。
そこへかつてのレクターの患者で、唯一の生き残りである大富豪ヴァージャー氏がレクターへ復讐するために、クラリスをおとりにレクターを誘き出そうと企む。
 で、その手段が凶暴なブタさんに生きたまま喰わせようというものだが、本作品では生きたまま脳の解剖や調理というシーンも描写されており、あまりにショッキングなため前回クラリス役のジョディー・フォスターは役を辞退している。なので今回は違う人がクラリス役である。
 今回は静かな狂気、という感じではなくまるでホラーなのだが、まぁそれが羊シリーズの味なのだし、これはこれで良し。である。
レクター博士は相変わらず良い感じのキャラクターである。


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