映画レビュー「ひ」


<羊たちの沈黙>
 これも映画として革新的な作品であった。
これまでのホラーといえば、70年代のゴーストもの。80年代のスプラッターものという潮流があった。そして90年代初頭、この「羊たちの沈黙」の映画化によって、日常の中に潜む狂気を描くサイコホラーが新たなテーマとして取り上げられるようになるのである。
 この物語は全米で若い女性を次々に誘拐し、皮を剥ぐ通称バッファロー・ビルと呼ばれる連続猟奇殺人犯を、新米の女性FBI警官クラリスがレクター博士の協力を得て追跡するというもの。で、レクター博士はこれまた連続食人殺人魔の天才精神科医として監獄に閉じ込められているのであった。
本作品の魅力は、シリーズを通じてアンソニー・ホプキンス演じるレクター博士にある。天才的な頭脳と美学を持ち、高尚な趣味の持ち主でもあるが、狂気の持ち主でもある。いわゆるその手の専門家が精神鑑定を試みようとしても、逆に食べられてしまったり、侮蔑の眼差しを向けるだけで無視されたりするのだが、ふとしたきっかけで新米女性警官のクラリスがやってくると一転する。
 クラリスは美貌の持ち主でもあるが、幼い頃からのトラウマを持ち、強さと脆さも持っており、彼女の過去に興味を示したレクター博士は事件の手がかりを教える代わりに、彼女の過去を聞くのである。こうしていつの間にか博士とクラリスの間には奇妙な友情のようなものが芽生えるのだ。

 いまなら格安でDVDが手に入るから一度は観るべし。


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