映画レビュー「か」


<カクテル>
 トム・クルーズの若い頃の主演作品。
トロピカルなシーンで流れる音楽が有名で、今でもたまに有線放送で耳にする。自分も映画より、この音楽こそが「カクテル」というイメージを持っていた。
 ストーリーは、青年がバイトでバーテンダーと出会い、パフォーマンスの才能を開花させて成功してゆくもの。ただし、途中の人生が一筋縄でいかなく、恋模様も友情も挫折してみたりするので、薄っぺらな内容に終わらない。良作だと思う。
バーテンダーとしてのパフォーマンスを教えてくれたパートナーが、一見成功者のように見えて自殺してしまうあたりは、資産家の孤独を感じさせる。
 つかの間のアメリカン・ドリームを垣間見させてくれる映画ですね。
中古ビデオで100円とか、どこでもそんな値段でジャンク扱いされているけれど、なかなか充実した作品なので、一度くらい観てみても良いと思う。



<隠し剣 鬼の爪>
 山田洋次監督の原作・藤沢周平の時代劇の第二弾。
私は山田監督のこのシリーズが大好きです。トム・クルーズの「ラストサムライ」も素晴らしいけれど、こちらの三部作シリーズには日本人の繊細な心と、そのよりどころがあると思いますよ。
 はじめは「たそがれ清兵衛」、次が「隠し剣 鬼の爪」、そして「武士の一分」となっています。これはカッコよすぎるぜ!!いつも思っているんだけど、世界中どこに出しても恥ずかしくない作品ですね。

 この映画の素晴らしさを伝えるのは、私には力不足だから、何はともあれ観て下さいとしか言いようがない。参りました、拙者、感服つかまつったでざる…。いきなり「たそがれ清兵衛」のDVDを買ってもOKです。藤沢周平の原作も座右に置いてよかろうと思われます。しば、これまで…。



<カッコーの巣の上で>
 いままでの人生に観た中で、「衝撃を与えた映画」は何か?感動であったり、震撼であったり、後味の悪さでトラウマになったり…。
 そんな昔からの映画好きが集まって、たまーに話題になるのが、「遊星からの物体X」…じゃなかった(笑)この作品です。感動という意味での衝撃ですが、平成生まれの若い世代には「グリーンマイル」とか「パッチアダムス」の精神病院版だと思ってくれれば良いと思います。
 ジャック・ニコルソンが若かった頃の古いカラー映画で、荒くれ者の主人公が刑務所労働が嫌なので、狂人のフリして精神病院に入ったところから始まります。ところが、ここの女所長が強情な上に朴念仁という超カタブツで、まぁ規則規則と厳しいわけです。患者は頭がステキなことになっちゃった連中ばかりだし、看護婦たちの人道的な処置でみんなすっかり骨抜きだ…。
 そこで主人公は問題を起したり、脱走したりと反駁していくうちに、自由を勝ち取ろうとする姿に仲間ができてゆき、最後はどうなるか?というお話です。

 アカデミー賞も獲って評価は高い作品です。しかし、派手な作風ではないので、昔の邦画のように「じっくりと人格形成に影響するような作品」ですね。若い頃、それも子供時代に観た方が感動するかもしれません。そういう映画。


<カサブランカ>
 「君の瞳に乾杯」であまりに有名なこの映画。
あと「昨日?そんな昔のことは覚えていない。 明日?そんな未来のことはわからない。」という、かっちょいい〜セリフもあります。
ハンフリー・ボガードがからこそ、こんなセリフが似合うのだ。ちょいとワルで、ダンディな男に惚れ惚れしちゃう代表的な映画である。
 戦時中ナチから逃れ、欧州から渡米するためには北アフリカの都市カサブランカでビサを取得する必要があった。そこでイカサマ賭博をしている男が、昔の約束に現れなかった女の影を引きずっているところに、その彼女が別の男と登場し、恋と義理人情の狭間で男心は揺れ動くのだ。 「無償の愛」や「偲ぶ恋」について、最近のキレやすい若者には見習うべきものがあると思う。恋人が思い通りにならないからと刺し殺すような男の何が愛情か!
 また、チャップリンの映画のように戦争中においても「決して権力に服従しない!」というメッセージが込められているシーンも見られる。ナチの将校を差し置いてフランス国歌を演奏させるシーンなどアッパレだ。
ラストは本当にハラハラしてしまったが、同じくフランス国歌で締めくくられて、見事アッパレな終わり方であった。名作。
あんまり素晴らしいから、ワンコインDVDから豪華版に買い直してしまったよ。

 いまオールド映画が格安で売ってるけれど、古い映画が必ずしも名作とは限らない。厳密に言えば、我々の感覚に合うとは限らないわけです。その中で、「ローマの休日」と「カサブランカ」と「第三の男」と「風と共に去りぬ」は本物の傑作だと思います。一度観ると格安DVDじゃなくて、きちんとしたレーベルのものを買おうと思ってしまいます。



<片腕ドラゴン>
 これぞ大傑作!!超絶、B級カンフー映画の金字塔である。(私の中で。)
ストーリーは悪の武道集団と闘っているうちに、強敵に片腕を落とされてしまい、命からがら生き延びた主人公が、障害者用の秘伝拳法を習得して復讐するというものだ。出てくる強敵がラマ僧、ヨガの達人、ジュウドー家、オキナワ流の使い手、という偏見丸出しダメ映画である(笑)。
オキナワ流のボスが登場する際には、何故か演歌が流れています。しかもコイツは牙が生えている…。
役者は台湾人のはずなのに、なぜか全員が英語である。いかにも昔の円谷プロみたいな、いかにも「特撮!」というセットや小道具。アクションシーンのおぼつかない役者の動き。シーンの切り替わりが明らかにフィルムの「切って貼った」感丸出しで、連続シーンの攻撃が早すぎ。展開の良さは「コマンドー」並で観ていて絶対飽きません。 言葉で説明するのはナンセンスなので、是非観てください。
 群馬県のみどり市笠懸図書館に置いてありますっ!!(国道50号沿い)
ネットでビデオ販売しているが、DVDが発売したらすぐにでも買いたい作品。

 とりあえず、昔からの友達が地元に帰ってくると知ると、必ず私が見せるのがこの映画。あんまり私が借りてテープが劣化すると困るので、友人にDVDに記録してもらった。とりあえず観たかったら貸してあげるから、これを読んだ友人知人関係者のみなさま、いつでも連絡ください(笑)



<片腕カンフー対空とぶギロチン>
 あくまで個人的に大傑作な「片腕ドラゴン」の続編。
この作品は、高校生の頃だったかな、「トンデモ映画」の本で存在を知ったように記憶している。だから「片腕ドラコン」よりこちらを先に知っていたのだが、何年探してもその勇姿を見ることはなかった。しかし、2006年11月14日。ついにキングレコードから本作品が販売していたのを見つけて私は狂喜・即買いしたのである。
 監督やスタッフも基本的に同じ設定だが、今回は武術監督が「酔拳」のラウ・カーリョンなので殺陣シーンが本格的になっている。それぞれのキャラが流派を活かして個性的に闘うが、相変わらずヘンな「ムエタイ格闘家」や「ヨガの達人」、「盲目の空飛ぶギロチンじじい」など、キルビルのタランティーノ監督もビックリのキャラクターばかりだ。
 だけれども、あえて悪く言えば、賢くて真面目なカンフーになった分「片腕ドラゴン」のアグレッシヴさが控えめになっちゃった…?
 もちろん、強引な展開やハチャメチャな決着方法(必ずどちらかが死ぬ)、ひたすら戦闘シーンが続いているうちに「あのノリ」が復活してきて、終盤は前作同様のありえねー闘いっぷりが観られるゾ!

話は変わるけれど、キングレコードがダメになってしまった理由って、もしかしたらこの「片腕カンフー対空とぶギロチン」をうわなにおするやめあwせdrftgyふじこ…


<ガタカ>
 この作品は「トゥルーマン・ショー」の監督が送る見事なサイエンス・フィクションであり、また危機に瀕した主人公をガンバレ!と応援したくなる映画である。ヒロインは「キル・ビル」のユマ・サーマンであるが、この作品では件の監督による演出の仕方で、決してハリウッド女優のような彫刻的美しさを感じさせないけれども、時おり「弱さ」を見せてくれる女性…として魅力あるキャラクターとなっている。
 ストーリーは、遺伝子解析で人の一生の情報を判別できる未来社会において、遺伝子差別が行われている。そうした中、ガタカという宇宙飛行センターに潜入して宇宙へ旅立つ夢を持つ男がいた。彼はいわゆる「劣勢遺伝子」なのだが、障害を持った「エリート遺伝子」のドナーと入れ替わり、優勢の人間に成りすまして宇宙飛行を目指すのだ。
そこで出会うヒロインも実は主人公と同じ境遇で潜入していたのだが、お互いエリートに成りすましているから最後まで気づかない(笑)。
いよいよ宇宙へ!という段階になって予期せぬトラブルが発生する…。

 よくよく見れば結構低予算な映画である。あと少しで「リベリオン」みたいなB級(?)SF作品になるかと思うくらいだ。しかし先にも述べた通り、演出や見せ方によって魅力的な作品になる良い例である。


<髪結いの亭主>
 フランス映画の愛のかたち。「アメリ」も良いが、次に観てみたいフランス映画といえば、私はこの作品をオススメします。
監督はパトリス・ルコントという名前がやたらと有名ですが、私はこの作品しか知りません(笑)
…と思っていたら、「ハーフ・ア・チャンス」がそうらしい。
 良い作品は冒頭が上手い。太宰治や芥川龍之介の文学作品にもそれが言える。
映画ではオードリー・ヘップヴァーン主演の「シャレード」がそれに当たるけれど、この作品には冒頭からド肝を抜かれてしまいました。なんじゃコリャ!?と(笑)

 物語は、子供の頃から床屋の女と結婚したいと願っていたアントワーヌは、「強く願い続けていれば夢は必ず叶う」という信念を持ち続けたところ、中年になって美人の理容師マチルドにプロポーズし、見事に成功し、結婚します。
 そして美容室のソファーに腰掛け、一日中奥さんの働く姿に見とれているのでした。男の夢ですね。

 男は「子供なんてできようものなら、美しい下腹部のラインが崩れてしまう」と思うし、奥さんもまた「夫に愛されているのなら他に何もいらない」のでありました…。
どうやらこの奥さんは過去に沢山男はいたけれど、愛情に満たされたことのない悲しさを持っていたようでした。実際そういう人は沢山いると思います。
だからお客がいなければ二人はひたすら愛し合うのです。いや、お客がいてもドサクサに紛れて夫は手を出すわけですが…(笑)。
美容室の清潔な舞台がセンス良く、モダンな雰囲気とシャンプーの香りの中で静かに愛の様子が語られます。

 最後は、愛情に満たされたまま人生の幕を閉じたいと願う、フランス女性そのものの生き方をマチルドは実演してみせます。
(そこが相手を殺して自分も身を投げるという、悲劇オペラのイタリア女性とは違うところなのでしょう…。)
 この話を聞いた友人は、観ないうちから「暗い映画だなぁー」と一蹴しましたが、それを言っちゃったら日本の映画なんて「私が死んでも絶対忘れないでね…」とか死に際に何度も確認したり、いつまでも死んだ女に執着させるようなもんじゃないか、と思うのであった…。
(もっとも、死んだ女の霊よりも怖いものは、映画が終わると、もう泣き止んでケロリとしている生きた女ですが…)


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