映画レビュー「ゆ」


<ユー・ガット・メール>
 アメリカの良心トム・ハンクスと女優はメグ・ライアンだったか、ニコール・キッドマンだかメモを紛失してしまいわからないが、電子メールをやりとりするうちに友情から恋が芽生えるストーリー。
ネット社会が今ほど当たり前のように広まっていないときの作品。
ネチケットを守りましょうなんて言っていた古きよき時代か。まだこの頃は、ウインドウズXPが出たか出ないかという年じゃなかろうか。

しかし、誰もがネットに触れているうちにオンラインの世界で仲間が出来たりする。相手のHPの掲示板に書き込んだり、意見交換をしていると新着メッセージが届いたときに嬉しくなるものだ。
 「ユー・ガット・メィル」
この声が聞こえるとワクワクしながらメッセージを開くという、この気持ちがよく表現されている。
(私が携帯電話が嫌いな理由は、情緒が無いからかも知れない…)

さて、作品はそれだけではありません。主人公の男は御曹司の息子ですが、その財閥はNYの街を次々に買収する中で巨大な本屋を立てる計画を立てます。だけど彼女の方は街の小さな絵本屋さんで、男女はお互いがメールで相談し合っていることを知らずにプライベートでは対立関係にあるのです。
 彼は顔も知らない彼女に「苦しい状況こそ闘うんだ!」と励ませば、彼女はマスコミを読んで財閥を批判するデモを行ったりしてしまいます。男友達の励ましの言葉がみんなゴッド・ファーザーで、「どうして男ってゴッド・ファーザーが好きなのかしら?」って会話が笑えます。
 やがて「今度逢ってみない?」というメッセージがやりとりされるようになって、事態は二人の思わぬ展開になります…。



<夕日のガンマン>
 クリント・イーストウッド主演の西部劇の名作。
イタリア製の西部劇を通称「マカロニ・ウエスタン」といいますが、これと『荒野の用心棒』などが逆輸入で大ヒットして、イーストウッドは『ダーティー・ハリー』シリーズで主演に抜擢されて、アメリカで大スターになりました。彼は名俳優になったその後も、自ら監督をこなして数々の名作を世に発表しています。中でも私は『パーフェクト・ワールド』が大好きですし、『ミリオン・ダラー・ベイビー』もアカデミー賞も受賞しています。生涯現役、カッコイイです。

 さて、舞台は命の価値なんて紙くずみたいな西部の荒野です。悪党の首を狙うスゴ腕の賞金稼ぎが活躍した時代ですが、主人公もその一人。賞金首は生かすも殺すも値段は変わらないときたもんだ。
 そんな折り、もう一人の痩身のスゴ腕ガンマンが現れた。肩書きは大佐で、歳はおよそ50代、黒澤明の映画に出てきそうな人生の苦味を知り尽くしている男の顔だ。この大佐と若い主人公、すぐに実力を察知した二人の男が、いまにも一騎打ちかと思われたが、手を組んでインディオや銀行強盗団をやっつけようとなるわけだ。賞金は山分けといきたいところだが、ここは荒くれ者がのさばる時代。
 お互い「いつ、イカサマや裏切りをやるとも限らない」という警戒心を抱いたまま、主人公は強盗団に潜入し、大佐は外から挟み撃ちを図る。紆余曲折のうち、敵を始末し利用しながら強盗団に近づく二人に、敵も裏切りや逆襲など拳銃騒ぎになります。
 いよいよ敵も見方も思惑を胸にドンパチという段になって、大佐のと敵の過去や主人公の活躍、二人の男の友情など展開します。
 この映画は好きだなぁ、何がって「二人の男」がですよ。男が並んだとき俳優がシブイだけじゃなく、言葉にしなくても二人の間には何か通じるものがあると思う。男の世界、あるいは友情、のようなもの。少なくとも大人の男にしか、この世界を垣間見ることはできないと思う。後半の大佐と敵のサンチョの間にあった時計の過去、それからラストで二人の男が分かれる場面。時計から流れるオルゴール音から展開する決闘シーン。わざわざ、つまらないセリフやカットで説明しなくても通じるんですよね。最小限でいい。もったいぶらなくてもいい。
 おしゃべりじゃないんだ。

 最近の映画は…って言葉は好きじゃないんだけど、でも『夕日のガンマン』を名作と思う理由は、説明無用の良さがある。表現のしかたはいろいろあるけれど、説明がおしゃべりになった途端どんな陳腐なものになるか。わかるかナ。


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