09.02.07

「This is HONDA」 1962年

 スーパーカブのプロダクションのお話です。

 いま、スーパーカブの生誕50周年を記念して、多くの出版社から関連書籍が発売中だ。
その中で最も豪華なのが、三樹書房の出版している「スーパーカブ50(SuperCub Fifty)」という本だ。
定価は3400円+税とちょっと高めだが、カブファンにとって充実の内容で特別記録DVDが付いている。
そこに収録されているのが、1962年に撮影されたホンダ会社案内の映画『This is HONDA』である。
 さっそく、一般初公開というこの作品を鑑賞してみたゾ。
映画のレビューのように、時にわき道にそれたり、思考をあちこちに飛躍させながら紹介していこう。


<NICEST PEOPLE ON A HONDA>
 冒頭は、まるで映画「さらば青春の光」のように、アメリカ大陸を走るカブの軍団を映すシーンから始まる。
常に60年代の特撮ホラーのような「おどろおどろしい音楽」が流れているので、ひょっとすると映画「マッドマックス」のようなアウトローな雰囲気である。誰もがきっと、モヒカンヘッドや革ジャンに鋲が打ってあるような世紀末な人達を想像するに違いない…。

 でも実際は違う。

 ホンダは通称「ブラックジャケット」と呼ばれていたアウトローな、「バイク乗り=悪人」という旧来のイメージを払拭するため、<NICEST PEOPLE ON A HONDA>=(ホンダに乗れば素晴らしい人に会える/あるいは、良い人は皆ホンダに乗っている)を合言葉に拡販キャンペーンを行ったことで有名だ。ロスの大手広告代理店であるグレン社が制作したこの新しい戦略は、カブを「新しい乗り物」としてアメリカで大ヒットさせることに成功したのである。

 さて、実はこの作品は冒頭でカブ軍団のパレードをちょっと映しただけで、それからずっとスーパーカブの製造現場の様子が映される。機械工学に詳しい自動車評論家である福野礼一郎さんの名著「クルマはかくして作られる」のイメージである。
おいしい野菜を食べたい人が、農家の野菜作りを見学させてもらうと思ってもらえれば良いだろう。


<製造の現場を見る>
 映像ではホンダのカブや、スポーツモデルのドリームを製造する工場のラインを、工程順に見ることができる。プラモデルのようにエンジンのピストンが切り離されるところや、真っ赤に熱したコンロッドを鍛造プレスしている。さらに牛乳のような白い洗浄液や、工作油を噴射しながらドリルで切削加工している様子。マフラーやペダルに施される、ニッケルメッキ⇒3つの中間処理⇒クロームメッキの工程や、ボディの塗装も見学することができる。

 嬉しいのは、私の興味があった「エンジン製造」と「品質保証」の工程が詳しく紹介されていたことだ。
カブは設計の古いバイクだが、この映像を見るとホンダが威信を掛けて作っていることがよーくわかる。

 まずエンジン。
コンロッド、カウンターシャフトは鍛造だ。ガス侵炭焼入れの他、カムシャフトやスプロケットには高周波焼入れを施している。ラインで12秒に一台組み立てられるエンジンは、ミクロン単位で部品を抜き取り検査しているし、もちろんその冶具も検査する。
モーターで摺り合わせ精度を高めているし、組み上げたマシンを検査員がダイナモ上で回すルームテストのほか、完成車の抜き取り走行テストも行っている。


 私はカブの驚異的な耐久性にほれ込んでいるわけだが、自分のマシンがどのようにして作られているのか、普段は決して見ることのできないプロダクションの現場を確認することで、誰もが安心して命を乗せることができるようになるだろう…。コイツに乗れば、地球のどこまでも走れそうな勢いだ。


 まさに、カブ オーナー必見の映像である!




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