09.02.04

一流工具の不良品を掴んだ話。

 アサヒのゲージボタルを「二輪用エアーチャック」に交換したことは前に書いたが、じつは小さなアクシデントがあったことを報告しよう。

 チャック交換に必要な13mmと17mmの工具を購入したが、この「KTCの17mmコンビネーションレンチ」が不良品だったのだ。まさか、あのKTCが? にわかには信じられない話である。
工具を購入する前にきちんとチャックの外径を確認したのに、家で使おうとしたら17mmのスパナが入らないのだから仕方ない。こういうとき、間違えても安易に「モンキーレンチ」など使ってはいけない。
(便利だけどネ…)

<ガツッ!と工具が入らない…>



 仕方ないから再び近所のホームセンターへGO!である。
二輪用エアーチャックと、不良品の17mmコンビレンチと、自分のノギスを手にして、映画「ボーン・アイデンティティー」に登場するローマの殺し屋よろしく、黙々とカブに乗って道を行く…。

 工具売り場に到着すると、担当者が「信じられない、KTCなのに…」とうわ言のように繰り返している。
「そのへんの安い外国製のは、そういうこともありますけどね…」なんて、つい店員の本音がポロリと出てしまったのを、私は苦笑しつつも聞き逃さなかった…。そんなモン売るなヨ、と思ったけれど需要があるのだから仕方ない。
 「そうですね、私もきちんとしたKTCを買いに来たのに、おかしいなと思ったんですよ。」
担当者がポケットからノギスを取り出し、私の二輪チャックに当ててみようとしたので、
 「それと同じノギスで、きっちり17.0mm 測定済みです。」
と、シンワの樹脂ノギスを手にして私は言った。

 店員の驚いた顔が印象的だった。

<キッチリと測定済み>




 「す、すみません!ではお買い上げになったレシートなどお持ちですか?」
と聞かれ、家を出る前にゴミ箱をすべてチェックしてきたが、出てきたのは本屋と喫茶店のレシートばかりであった。しかし、私の手帳にはレシートと同じ内容のデータが記録してある。
 「レシートは既にありませんでしたが、購入した日時と、一緒に買ったものならわかりますよ。」
そういってかざした紙には項目、金額、その内訳等がすべて日付順に記してあるのだ。
私はシステムバインダーからそのページを取り外し、マネークリップに挟んで持参してきたのである…。

 店員の「コイツは完璧超人か…」という表情が印象的だった。


 しばらくすると、何事ですかと店員2名がやってきた。
出たな、ショッカー。
店員同士が事情を話し合っていると、不良品なのでレシートもいらないし、現金などもかかりませんといわれた。 「申し訳ありません、新しいものとそっくり交換しますので…。」
と店頭にあった2本の17mmを持ってきた。二輪チャックに当ててみると、じつにピッタリである。
内緒だが、これにも微妙な差があって、そのうちクリアランスがキツい方を選ばせてもらった。




 製造の現場にいた経験もある私にとって、「完璧」は無いことはよくわかっている。
大量生産される中で、当然メーカーは品質の抜き取り検査も行っているハズである。
だが、どんなにオートメーション化が進んでも、最終的に製品は人の手にかかっているのだから、私はそれを責めることはない。世間の人々が眠っている間に、人知れず睡魔と闘う夜勤労働者がそこにいるのだ。あるいは朝早くから就業時間まで、工作油にまみれながらしょっちゅう誤作動を起こす産業ロボットと格闘して、現場を知らぬホワイトカラーのお偉方から罵声を浴びせられている工員がいるのだ。
 「たかがこれくらい…」で鬼の首をとったように怒鳴り込むような客は、ぶっちゃけて言わせてもらえば暇で悪質な、ただのクレーマーであるとさえ思ってしまう。
 もちろん、メーカーとしては不良品はあってはならない。
日本の製造業が世界に誇れるまでに産業をリードしてきたのは、品質過剰といわれるほど真摯にモノづくりをしてきたからである。

 だが、その舞台裏で起きている理不尽な出来事をよく知っている私には、ただ「黙って新しいものに交換してもらうだけ」で十分なのである。


 私はこれからもKTCの工具を支持するし、また工具の購入を検討している人にオススメします。
個人的には今のスナップオンを買うよりも、ネプロスの方が造りは良いと思いますし。
特に、「ライダーズ・メンナンスセット」は私の理想的な工具セットです。カブの基本的な点検整備はこれで出来ると思いますよ。




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